エンパイア・オブ・ライト レビュー

エンパイア ポスター

英国の海辺に佇む映画館、エンパイア劇場に集う人々の愛と友情と絆を描く感動の物語。黒人と白人の恋愛物はしばらくハリウッドではタブー視されていたが、ここ数年でそのような風潮も撤廃され始めてきていてる。この映画はオリヴィア・コールマン演じるヒラリーとマイケル・ウォード演じるスティーブンが同じ映画館で働く従業員同士。統合失調症を患い、副業で体を男に売るような傾向もあり、時々ヒステリックな幻想や行動に躍り出る中年女性ヒラリー。建築の大学へ進学するという夢を抱えながら、白人至上主義団体からたまに嫌がらせや暴行を受けても、明るく前向きに生きていこうとする黒人青年スティーブン。

どちらというと社会的には確実に弱者の側に位置する二人のキャラクター設定と配役が見事だった。のどかな80年台イギリスを彷彿とされるような、風景も絶景で海や花火、映画館など男女が一夏の恋愛を楽しむにはうってつけのシチュエーションだ。実に映画にしやすい設定だよね。

一番グッときたのはやっぱり、映画館で働いているのに、日々の瑣末や煩雑に翻弄されてあまり映画を観てこなかったヒラリーが、スティーブンの教えで開眼し、映画を観るようになるところ。

その映画がこちらのピータセラーズの名作、チャンス。

80年代だなー。水面を歩くシーンとか最高だよね。スティーブンの映画愛溢れるセリフ、めっちゃシビれたな。週末の金曜日のレイトショーはやばいっすよ(笑)涙腺決壊し始めてきとる。週末にはもうよれよれの線(笑)その映画を観ている時のオリヴィア・コールマンのあの表情。表情の演技力がえげつなかった。さすがオスカー女優。この前のファーザーも良かったけど。看護する側から誰かに手を借りないと生きていけない側へ。女優としての振れ幅しかと感じ。

監督のサム・メンデスはデビュー作でオスカー受賞のアメリカン・ビューティーがとにかく好きすげて。高校生くらいだったかな。こんな傑作観たことないって、そりゃたまげたもんだ。ケヴィン・スペイシーの仮面お父さんぶりと、若くてグラマラスの女に誘惑されて人生が転落する様は、何度観ても痛快。その後007とか撮るようになって、あまり目立ったヒューマン系の傑作は無かったが、今作で原点回帰したか?といったところ。

これからも、こういう静かでヒューマン系の映画を撮ってほしい。なぜか、この映画はラム酒を飲みたくさせる映画だ。

なぜだかはわからない。







アメリカンビューティー